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コラム COLUMN

令和4年度 専門人材育成研修(舞台芸術系)第3回レポート

研修会場 於:横浜能楽堂

 

 

2022年 8 月 26日、舞台芸術系プロデューサーを育成する研修が、横浜能楽堂で実施された。2019年より舞台芸術系の4施設(横浜みなとみらいホール、横浜能楽堂、横浜にぎわい座、横浜赤レンガ倉庫1号館)が年度毎に主管となって開催しており、今年は4年目となる。今年度は横浜能楽堂・上野支配人コーディネートのもと「公演アーカイブ『つくる、つかう、ひろげる』」をテーマに実施。今回はその最終回=第3回であった。

 

対象は、横浜市芸術文化振興財団が運営する舞台芸術系施設や部署等に勤務する職員(前記4施設、ACY・協働推進グループの5つの部署)。今年度はプロデューサー5名と将来的に舞台芸術系プロデューサーを目指す職員8名および、アーカイブがテーマのため、関わりの深い横浜美術館の職員も参加した。また、今年度のテーマは昨年度の研修終了時に参加者から希望があった課題である上に、各施設にとっても、横浜市芸術文化振興財団全体にとっても、またアート界全般にとっても将来的な課題となっていることから、3回の研修で深く掘り下げることになった。

 

研修第1回は2022年5 月 23 日に実施され、アーカイブに関する現況と課題を各施設がプレゼンテーションし、また、本財団においてのアーカイブとは誰のためのものであるか、舞台公演、コンサートなど芸術文化事業の模様をどのような形で伝えることができるかが検討され、今後に本財団でアーカイブをどのように活用していきたいのかをグループディスカッションした。
第2回は、7 月 26 日に早稲田大学坪内博士記念演劇博物館から2名の講師を招き、デジタルアーカイブの事例のレクチャーを受け、グループディスカッションを行った。

 

2回の研修を踏まえての今回の第3 回は、著作権などの権利処理の専門家の講義とグループディスカッションで組まれた。
第 1部は、弁護士・田島佑規さん(骨董通り法律事務所)による『アーカイブを構築する上で押さえておくべき権利処理』と題して講義が行われた。田島さんは文化庁 EPAD(緊急事態舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化)事業の権利処理チーフを務めた経験を踏まえ、著作権と契約問題の実例と法務処理の説明がされた。

 

     

 

その内容を要約すると−−
・著作権について
そもそも著作権が発生する著作物とは何か?
どんな時に著作権者の許諾が必要なのか?
・著作隣接権について
2つの著作隣接権がある
1:実演家の著作隣接権
実演家(歌手、俳優、ダンサーなどなど)は録音・録画権、放送権、配信する行為などに対する権利、譲渡権などを有する。
しかし、この権利には重要な例外「ワンチャンス主義」*がある
(*収録などを一度許可するとその後の二次使用の際には契約の機会はない)
2:レコード(録音の原盤)製作者の著作隣接権
・肖像権について
肖像権の侵害に該当するのはどんな時か?
・上記権利を処理する際の方法と問題点について
舞台公演における特有の権利処理について:
権利者 (著作権や著作隣接権を持つ人) が非常に多いこと/契約の重要性とタイミング/音楽に関する権利処理の複雑・煩雑さ
・アーカイブや配信における「権利の壁」のまとめ

 

法律用語が並ぶ2時間近くの講義のうち、なかでも実演家の著作隣接権の権利処理についての説明には、公演実務を担当する施設職員たちが熱心にメモを取る様子が見られた。

 

質疑応答では、「権利処理の準拠すべきマニュアルはあるか?」「客席が参加するような演劇などの配信やアーカイブの場合、肖像権はどうなるか?」「海外向け配信の場合は日本の法律に則っていいのか?」など現場の実情からの疑問点があがり、それに対する回答やアドバイスを得た。

 

この受講の後40 分間のグループディスカッションでは、3つのグループに分かれ、 今回のレクチャーを受けて「公演をアーカイブするにあたっての契約・権利処理に関することで、今後に向けて行うこと」について論点を整理した。

また、今年度の3回にわたるアーカイブの研修の総まとめとして、横浜市芸術文化振興財団としてのアーカイブのあり方についてグループディスカッションが行われた。

    

 

参加者からは、

「本財団のアーカイブは横浜市民の財産でもある。誰でもアクセスできることが必要。全体のアーカイブを構築するのはすぐには難しいので、各施設の今あるシステムを活用していくことから取り組むのはどうか」

「財団全体として網羅・横断するアーカイブの構築は財団のブランディングにつながり、歴史を残すことにもなる」

「アーカイブは横浜市という地域や街の記憶を残すことになり、本財団の活動をステークホルダーである横浜市民に共有することは重要な責任でもある」

といった意見が発表された。

     

 

 

チーフ・プロデューサーの4人からは、「アーカイブ化するのは誰のためか」の議論を深められたこと、アーカイブの必要性についての共通認識ができたことを評価するとともに、今後継続して検討していくとの考えが示され、3回にわたる専門人材育成研修は締めくくられた。

 

 

 

 

 

 

 

 


取材・文 猪上杉子
写真 大野隆介

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