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コラム COLUMN

理事長コラム

“いのち”

ゆず

 

横浜市民のみなさま、明けましておめでとうございます。

本年がみなさまにとって、幸多き年でありますようお祈りしております。

 

我が家の「ゆず」も今年は今まで以上に巨大で、みなさまの新年の夢の大きさを体現しているようです。

庭の木と言えば、昨年12月のある日の夜のことでした。庭に一昨年のクリスマスで使ったもみの木の鉢植が置いてあること思い出しました。飾りを取り外したあとも捨てるに忍びず、また翌年も使えるかも知れないと期待して庭に置いたままにしておいたものです。

 

そばにいって見ると、そのもみの木は枯れることもなく、庭の小さな自然の中で生き延びているどころか、背丈が伸び、鉢が大きく割れるほど根も成長していたのです。「処分」などしなくて良かったと思い、「よく一年頑張ったね、今年も頼むね」という気持ちで、すぐ水と栄養剤をやりました。

 

そしてふとその鉢の脇を見ると、何やら小さな赤いものが見えたのです。バラ?まさかクリスマスの時期に・・・と気になりましたが、暗く、寒い中でそれ以上確認せずにベッドに就きました。。

 

翌朝目覚めたときに、思い出して庭に出てみると、何とそれは小さな鉢に数年前から植えてある真っ赤なバラの花でした。初夏のシーズンには毎日水をやっていましたが、秋以降は忙しさにかまけてほったらかしでした。たまたま2,3日前に、この寒さの中でも頑張っているかも知れないからと、久しぶりに栄養剤をやったばかりでした。そのバラが応えてくれたのです。

 

もみの木と薔薇

 

小さな庭にもさまざまな“いのち”があること、それもセミや蝶々だけでなく、言葉を知らず、動くこともできない植物にもいのちがあり、自然の摂理の中でじっと耐えて、人間の心にもちゃんと反応してくれることを知り、感動しました。

 

実はそのひと月ほど前に、私にとっての初孫が無事に育って1歳になり、それを見届けるように、いつも笑顔でその子をあやしていた義母が、96歳で天に召されました。いのちは、ただそこにあるだけでなく、循環していること、そうして地球上の生命体は、個体は滅びても種は生き残り、38億年も続いてきたことに想いが至りました。

 

この「生命の不思議」や、「“こころ”とは何か」はいまだに科学では解明されていません。生き物を細切れにし尽くして、その最小単位がDNAだということが分かっただけです。それにも拘わらず、人類はAIを含む最先端のテクノロジーをひとの幸せ、いのちを守るためではなく、権力と富、民族の怨念を果たすために使い、自然界のあらゆる“いのち”を無視する、罪深い偽善者になっているのではないでしょうか。SDGsのバッジをつけながら、環境破壊、野生動物の殺戮、人権無視を組織的にやっているのですから。

 

折しも今年の大阪・関西万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」です。この壮大な思想は、人類のすべてが支えていかねば、文明の誤った流れは止められません。

 

そのためには、SDGsバッジではなく、ひとりひとりの日頃の心がけ、自然への感謝の気持ちが大切です。“いのち”あるものは、小さな思いやりに、言葉を話せない一本の木も、ひとつの花も、ちゃんと応えてくれるのですから。

 


公益財団法人横浜市芸術文化振興財団
理事長 近藤誠一

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