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コラム COLUMN

研修レポート

令和4年度 階層別研修 広報研修レポート 特色ある広報を展開する企業担当者にきく「S/PARKの取り組み-地域貢献と広報」

 

令和4年度 階層別研修 広報研修レポート 特色ある広報を展開する企業担当者にきく「S/PARKの取り組み-地域貢献と広報」

 

2023年2月24日、広報担当職員を対象とした広報研修がみなとみらい地区にある資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)の協力をいただき実施されました。

今回の研修では株式会社資生堂、S/PARK事業企画グループ グループマネージャーの圷隆宏(あくつ たかひろ)さんによる講演とS/PARK内の見学、最後に質疑応答を設け、広報の視点から学びました。

講師:圷 隆宏さん(S/PARK事業企画グループ グループマネージャー)

 

■S/PARKの姿と地域との連携

最初に、ホームページで公開している、資生堂誕生についてまとめられた「日本初の民間洋風調剤薬局」や、食やアートとの関わりについて紹介している「資生堂パーラーと資生堂ギャラリー」といった映像を使って、昨年2022年に150周年を迎えた資生堂の歴史や歴代の製品、広報誌「花椿」についてなど、連綿と受け継がれる同社の命脈についての紹介がありました。

 

上/資生堂という社名は、中国の古典、四書五経のひとつ『易経』に由来

左/1897年化粧水「オイデルミン」を発売し化粧品業界に進出 右/「資生堂月報」は1933年「資生堂グラフ」

 

現在の姿としては、世界120か国で商品展開を行い約4万人の従業員が働いており、技術面では、世界中の化粧品研究者が目標にする研究発表会(IFSCC学術大会)においてアワードを29回という世界最多の受賞数を誇り、研究部門がS/PARKに移転後もR&D(Research and Development)の中核拠点として様々な研究開発活動を行っていると説明が続きます。

 

●研修施設をみなとみらいに移転したのは?

日常的にお客様と触れ合える場所、多くの人に来ていただける場、様々な「知」が集まり研究開発に繋げて行けるエリアとして、複数の候補の中からみなとみらい地区が選ばれたとのこと。地上15階建てのビルのうち、最も眺めが良い最上階を社員全員が使える場としてカフェテリア(食堂)とし、12階から14階と5階から9階が研究室、10階と11階がオフィス。3、4階は講演や研修を行うホール、共同研究が行えるラボや商談スペース等とし、1、2階は一般に開放しているエリアになっているそうです。

資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)の特徴ある構造や働き・機能についての説明

 

●地域社会との連携と広報

S/PARKでは地域に根差した視点で活動を行っています。地域活動としては、みなとみらい21PRセンターや横浜観光コンベンションビューローへの参画の他、すぐ近くにあるみなとみらい本町小学校との交流、スタートアップ企業との共同研究開発等も積極的に行っているとの事でした。広報活動に関しては、主に地元の情報誌への情報提供等、横浜を中心に情報発信を行っているメディアとのリレーションの他、映像コンテンツによる発信等を行っています。

 

■ワークショップ S/PARK施設を見学

一般にも開放されている1階2階は、Cafe・Studio・Beauty Bar・Museumの4つのコンテンツで運営されており、ロビーにある世界最大級の高画質ビジョン等と合わせて実際に見学しながら集客に向けた工夫や設備について学びました。

1階に数か所ある入口を入って最初に目を引くのが、S/PARKのSを形どったガラス張りの螺旋階段と、その後方壁いっぱいに設置された横20m縦5mの高画質ビジョンです。開館当初は16Kの映像がNHKでしか作れず2つのコンテンツのみでスタートし、現在は関西テレビ等にも依頼し、等身大の動物が出てくる子供たちに人気の作品や海を基調にしたものなど5作品を上映。2019年にはラグビーワールドカップを見るというイベントを行い大盛況だったとのことでした。

世界でも最先端の16K 超高精細マイクロ LED ディスプレイの大画面

 

資生堂パーラーが運営するカフェでは野菜を中心とした美と健康を意識した メニューを提供、スムージーやランチプレートが人気で、圷さんのオススメはボリューム満点のポークカレーだそうです。

スタジオでは「アクティブビューティー」をテーマに独自のメソッドによるワークが行われています。ビューティーバーでは、製品を気軽に試せますが販売は行っていないそうです。隣に併設されている「資生堂で一番小さな認可を受けた正式な工場」では、ガラス張りの中で製品が作られて行く工程を見学出来ました。

「資生堂で一番小さな認可を受けた正式な工場」

 

2階には体験型ミュージアムがあります。パッケージの歴史やデザインの変遷といった展示物、現在取り組んでいる事業としてSDGsに関する展示等を見学しながらパッケージのSDGs化について伺いました。

またフレグランスに関する展示では、調香した香りを試す体験ができ、楽しみながら展示の説明を受けました。イベントスペースには、常設展示として若手女子研究者たちが立ち上げた「美活ジム」という肌と表情のトレーニングに特化した取り組みの他、活用法についての説明を受けました。

 

1階2階それぞれに、人を集めるための工夫、見せるための工夫が随所に隠されており、今後の財団各施設の運営や広報宣伝の参考になる点が多数ありました。

見る・触れる・かざす・嗅ぐ・・・と五感を使って学び体験できる展示

 

■質疑応答

S/PARKの取り組みの一部を見学した上で、参加者からの多方面な質問に答えていただきました。

 

Q)横浜美術館 園田泰士さん

スタッフの皆さんが白衣を着ていましたが、研究所としての印象を残すための演出として着用されているんでしょうか。

 

A)まったくその通りで常勤しているスタッフのユニフォームは演出の一つとして白衣になっています。実用的な研究員用や今私が来ている見学者用の他、4種類ありスタッフによって使い分けています。

 

 

Q)横浜美術館 襟川文恵さん

広報用の動画ではアナウンスが英語で字幕が日本語という構成になっていましたが、グローバル戦略という点で、中国や韓国等を含めた多言語に対してはどのように対応しているのでしょうか。

 

A)社内の公用語が英語なので英語と日本語は必ず入るようになっています。先ほどご覧いただいたミュージアムでは、最近音声ガイドが導入され、英語・日本語、中国語・韓国語の他ウクライナ語と、5か国語に対応しています。こうした多言語化への取り組みは順次行う予定でいます。

 

Q)横浜美術館 襟川文恵さん

コスメや美を中心とした施設ですので女性客の利用が多いと思うのですが、性別の境目が緩やかになっている今、男性の利用者に対して行っている施策や配慮があればお聞かせください。また「空間を共有する」という観点から、ジェンダーの壁に関してどのような課題意識をお持ちかについても教えてください。

 

A)S/PARKでは設計段階から多様性を意識した空間デザインや施設内サインなどを検討してきました。特にトイレのサインや、トイレ自体の設計については、世界中の事例を探索したり、多くのデザイナーから意見を聞いたりと、ずいぶん検討しました。しかし、まだベストの手段を見つけられていないため、今後の課題としてとらえています。

蔵内健太郎さん(S/PARK事業企画グループ マネージャー)

 

Q)横浜にぎわい座 梅澤のど佳さん

去年の150周年ではどのような記念行事を行ったのかという点と、海外での売り上げが大きな割合を占めるとのお話がありましたが、国内とは違った広報戦略を行っているのでしょうか。

 

A)150周年のコミュニケーションについて、国内においては2022年1月5日の新聞広告を皮切りに、150周年スペシャルサイトや150周年スペシャル動画などを通じて、150年の歴史と共に「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指すことを発信しました。海外においては、地域本社を中心に様々な形で150周年の情報を発信しています。150周年スペシャル動画は、TVCMだけでなく、JRの車内サイネージでも流れていましたので、ご覧になった方もいたのではないでしょうか。S/PARKにおいても人気コンテンツでした。

S/PARKの広報は、研究所としての技術情報発信と企業価値向上いうコーポレート視点の発信と、お客さまが訪れる美の複合体験施設であるS/PARKの情報発信という2つの役割を担っています。後者においては、横浜市やみなとみらい地区など「地域貢献」ということも意識して取り組んでいます。

 

Q)市民ギャラリーあざみ野 沼田英子さん

ツアーは一般の方向けにも行っているのかという点と、海外からの来館者に向けた広報活動はどのようなものがあるのかについてお聞かせください。

 

A)ツアーに関しては一般向けには行っておりません。通常は自由見学というかたちになります。海外に向けた発信という点では、あまり出来ていないのが現状です。オープン当初は中国を始め海外からのお客様も多数来館いただきましたが、コロナ禍になって現在に至っています。研究所ならでは、横浜ならではの見せ方の工夫が今後必要だと模索しているところです。

 

Q)総務グループ 高田美汐さん

移転されて3年とのことですが、以前は新羽、新横浜と、研究所が長らく横浜にあるというのが印象的でした。そこで、研究所の皆さんが感じる横浜らしさについてお伺いしたいと思います。また、みなとみらい地区に移転し地域やお客様との接点を持ったことでどういった影響がありましたか。

 

A)東京ほど完全過ぎず、郊外にはのんびりした部分もあり横浜は「丁度良い都会」だと感じています。こうした場所で、地域やお客様と接点を持ってみて小さな変化は感じていますが、まだこれからと思っています。将来的にはその変化が強みになると考えています。

 

Q)経営企画室 鈴木慶子さん

講師・圷さんのプロフィールにある化粧心理グループとはどのようなことをされている部署ですか。

 

A)産業心理学としての化粧心理学は、肌をキレイにという機能面だけではなく情緒的な価値、いわゆる感性価値を重視した研究で、触り心地や香、パッケージとかCMの魅力とかブランドの世界観全部を含めたモノづくりの研究をしています。

また、医療面では、怪我や病気、先天的なことで肌に関して精神的に辛い思いをされている方々に対し、医師と協力して「セラピーメイク」というのをご紹介する等の活動も行っています。

その他、美容の社会的価値をお伝えする書籍の出版物等、化粧・美容に関する心理学全般を研究するのが、化粧心理グループの研究領域となっています。

平尾直靖さん(S/PARK事業企画グループ マネージャー)

 

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★今回の研修に興味を持った方は、ぜひ一度S/PARKを訪れてみてください。

◆研修会場

資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)

住所:〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島一丁目2番11号

定休日:日曜  入場料:無料

アクセス:みなとみらい線「新高島」駅1・2番出口すぐ、JR/市営地下鉄「横浜」駅東口から徒歩10分

 

◆講演内で上映された動画

youtube資生堂

資生堂企業資料館「日本初の民間洋風調剤薬局」https://youtu.be/viLfHpu1yUk

資生堂企業資料館「資生堂パーラーと資生堂ギャラリー」https://www.youtube.com/watch?v=jgholIp6FAg

資生堂企業資料館「文化情報誌の刊行」https://youtu.be/kdIINR1CU64

 

◆ホームページ

S/PARK(エスパーク)https://spark.shiseido.co.jp/

 

◆協力いただいたスタッフ

資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)

圷隆宏、會津容子、平尾直靖、蔵内健太郎、小玉晶子  ※敬称略

 

 

コーディネーター:経営企画室・広報 鈴木慶子


取材・文 田中 康
写真 鈴木教之

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