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コラム COLUMN

理事長コラム

生きることは変わるということ~新しい年を迎えて

 

コロナウィルスは生命体なのか?

生物学者の間では意見が分かれるようです。そもそも「生命とは何か」という本質的問題に対して、まだ定説がないことの反映です。地球上に38億年にもわたって存在してきたのに、まだ生命の本質が分かっていないのです。

 

難しい話は別にして、生命の謎は、「秩序あるものはすべて無秩序に向かう」という宇宙のエントロピー増大の法則に抗って、長く生きることができることにあります。個体が精一杯生きたあと死んでも、子孫を残すことでその種は、そして生命体全体は生き続けてきたのです。

 

その秘訣は、常に新しい分子やたんぱく質(エントロピーが低い)を食物として摂取し、体内の古くなったもの(エントロピーが高くなった)を排泄して、構成するものを入れ替えていることにあります。生物の体は固定された実体ではなく、常に流れていくタンパク質などが一時的に滞留しているところに過ぎないのです。

 

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。とどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世中(よのなか)にある人と栖(すみか)と、又かくのごとし(『方丈記』)。

 

鴨長明は、科学が発達するはるか前に、生きることの本質をとらえていたのです。生命とは「流れ」なのです。だから波を打ったり、左右に振れたりしながらも、否そうすることで環境変化に対応して生きていけるのです。

 

その観点から見れば、コロナウィルスの個体は自己増殖すらできないので生命体とは言えないかも知れませんが、常に変異種をつくり、そのどれかがたまたまワクチンなどの新しい環境に耐えることができて生き残るという意味で、全体としては立派な生命だと言えるのではないでしょうか。

 

そしてそれこそ人類が見習うべき点です。自分と言う個体も、生活スタイルも、組織の在り方も、うまくいっているからといって固定しないで、常に変化しながら新しい環境に合わせていく不断の努力がないと、エントロピーに潰されてしまうのです。

 

常に現状に満足せず、先を見て新しいことに挑戦し続けるエネルギーが必要なのです。失敗を恐れてはいけません。でも政治は権力をもったものがそれを維持しようとし、経済は利益を上げた企業がその地位を保持しようとします。それぞれにおいて新陳代謝がなされず、滅びていくのです。「奢れるもの久しからず」(『平家物語』)という名言もありますね(中国の『紅楼夢』も同じです)。

 

それができる分野があります。芸術です。そもそも現状に満足したり、変化を嫌っていては、芸術は成立すらしないでしょう。芸術こそいまのような先の見えない時代に最も必要なものなのです。「不要不急」といって軽視する社会は衰退するしかありません。

 

われわれ財団は、こうした芸術のもつエネルギーによって、変化が生む「生きる力」を個人や社会に浸透させることを使命としているのです。

 

今年も社会を大きく変えることで、生きる力を生んでいきましょう。

 


公益財団法人横浜市芸術文化振興財団
理事長 近藤誠一

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